銀行カードローン審査が厳格化!規制や融資への影響は!?
銀行カードローンは、かつての消費者金融カードローンと同じように「年収の3分の1超の借入」や「即日融資」が可能でした。しかし近年、銀行カードローン審査の厳格化により、銀行カードローンの審査や利用方法が見直されて今まで通りのキャッシングができなくなってきました。
そこで本記事では「銀行カードローンが厳格化されることになった背景と理由」や「銀行カードローン審査の厳格化による利用者のデメリット」などについて、詳しく解説していきます。
目次
銀行カードローン審査が厳格化されるまでの背景
「銀行カードローン審査の厳格化」を解説する前に、銀行カードローン審査が厳格化に至った背景を知っておく必要があります。
「銀行カードローン審査の厳格化」を理解するための3つのキーワード
- ①カードローン金利に関係する「利息制限法」と「出資法」
- ②カードローンの借入額が制限される「総量規制」
- ③カードローン申し込み当日にお金を借りられる「即日融資」
上記の①〜③について詳しく見ていきます。
①カードローン金利に関係する「利息制限法」と「出資法」
カードローンに適用される金利は「利息制限法」と「出資法」という2つの法律が関係しています。どちらも「金利」の上限が決められている法律ですが、それぞれに違いがあります。
法律名 | 利息制限法 | 出資法 |
---|---|---|
法律が適用される対象 | 借主(個人や法人も関係ない) | 貸主(貸金業者) |
適用される金利(法改正前) | 元金10万円未満…上限金利20.0% 元金10万円以上100万円未満…上限金利18.0% 元金100万円以上…上限金利15.0%まで |
上限金利29.2% |
適用される金利(法改正後) | 変更なし | 上限金利20.0% |
上の表を確認すると、出資法の改正前での上限金利は、「利息制限法の金利20.0%と出資法の金利29.2%」と違いがあるのが分かると思います。実は出資法の改正前には「利息制限法に違反しているが、出資法には違反していない」という金利(20.0%超〜29.2%)が存在していたのです。
利息制限法と出資法の金利差=グレーゾーン金利
この金利の差は「グレーゾーン金利」と呼ばれていて、法改正前は処罰の対象外(※)だったため、多くのカードローンでは利用者に29.2%という非常に高い金利を設定していました。
グレーゾーン金利が処罰の対象外だった理由
グレーゾーン金利が適用できたのは「みなし弁済」という制度があったためです。みなし弁済とは、下記の条件を満たせば利息制限法の利率を超えても罰せられない制度のことです。
①貸主が貸金業者である
②借主が納得して利息を払っている
③借主が自らの意思で利息を支払っている
④貸付時に契約書(17条書面)が交付されている
⑤弁済ごとに受取証書(18条書面)が交付されている
※今では「みなし弁済」は撤廃されています。
グレーゾーン金利により自己破産者が増大
非常に高い金利(グレーゾーン金利)によって、カードローンでキャッシングしたお金の返済ができなくなった利用者が増え、多くの方が自己破産したのです。
自己破産者の増大が社会的にも大きな問題となって、国から貸金業に係る法律の見直しがありました。出資法と利息制限法が改正され、今では出資法の上限金利が下がって出資法と利息制限法の上限金利が20.0%に揃っています。
②カードローンの借入額が制限される「総量規制」
貸金業者=消費者金融のカードローンでの借入金額は「総量規制」という貸金業法内の法律が大きく関わっています。
総量規制とは?
貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合、新規の借入れをすることができなくなります。
ただし、すでに、年収の3分の1を超える借入残高があるからといって、その超えている部分についてすぐに返済を求められるわけではありません。
出典:貸金業法のキホン|金融庁
総量規制とは、貸金業者は申込者の年収3分の1超のお金を貸してはいけない、と決められた法律のことです。
総量規制実施前には自己破産者が多かった
総量規制の実施前には借入金の上限が規制されていなかったため、年収の何倍もの大きなお金を借りる方が多く、自己破産してしまう方も多かったのです。「総量規制」が実施されたのは、出資法が改正された日と同じ平成22年6月18日で、それ以降、貸金業者である消費者金融カードローンでは自己破産者が減少しています。
③カードローン申し込み当日にお金を借りられる「即日融資」
カードローンには、申し込み当日にお金を借りられる「即日融資」というサービスがあります。即日融資は、すぐにお金を借りられるというメリットがあるのですが、手軽にキャッシングできるため、「キャッシングの資金が反社会的勢力に流出している可能性」も懸念されています。
※消費者金融カードローンでは現在でも即日融資が可能です。
銀行カードローンの審査が厳格化された理由とは?
このように、過去のカードローンは「高金利」、「借入額の制限がなかった」ことから、多数の自己破産者が出てしまい、貸金業者(=消費者金融)に関係する法律「貸金業法」が改正されました。
銀行カードローンは法改正の対象外!?
しかし銀行カードローンは貸金業者ではないため、貸金業法が適用されません。つまり、銀行カードローンは法改正の影響を受けておらず、総量規制の実施対象外になっていたのです。
銀行カードローンの高額な融資により自己破産者が増加
総量規制の対象外であった銀行カードローンの利用者は「高額なキャッシング」によって返済ができなくなり、今度は銀行カードローン利用者の自己破産が増加しました。
日弁連が銀行カードローンの意見書を提出
銀行カードローンの自己破産者が増えたことを受け、日弁連(日本弁護士連合会)が平成28年9月16日付で「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書」を発表、内閣総理大臣、内閣府特命担当大臣(金融)、衆参両議院議長、全国銀行協会会長へ提出しました。
銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書
銀行等は、貸金業者による保証を付した消費者向け貸付けを行う際には、貸金業法13条の2に規定するいわゆる総量規制など貸金業法の趣旨を踏まえて、原則として、借入残高が年収の3分の1を超えることとなるような貸付けを行わないようにするなど、銀行等による貸付けが顧客にとって過剰な借入れとならないように、顧客の実態を踏まえた適切な審査態勢を構築すべきである。
上の意見書は一部を抜粋したものですが、日弁連は「返済しきれないほどの借金を抱えてしまう多重債務者が増加したのは、銀行カードローンの過剰貸付によるもの」という意見が記載されています。
銀行カードローンで実際に行われていた高額な融資
また、日弁連が銀行カードローンに関する多重債務相談を行なった弁護士にアンケートしたところ、下記のような貸付のケースが見受けられました。
年収が356万円の40代女性に対し、銀行が433万円を貸し付けたケース
年収が220万円の60代女性に対し、銀行が500万円を貸し付けたケース
年収が160万円の60代男性に対し、銀行が無担保ローン226万円を貸し付けたケース
このように、銀行カードローンの利用者は年収の何倍ものお金を借りる方もいて、自己破産を起こす方も非常に多かったのです。
日弁連の意見書を受けて全国銀行協会が申し合わせを発表(=審査の厳格化)
全国銀行協会(全銀協)は、日弁連の意見書を受けて、平成29年6月に「銀行カードローンに関する全銀協の取組みについて」という申し合わせ(※)内容の資料を発表しました。
※申し合わせとは?
申し合わせとは、「話し合って決めること」を指します。法的に制限されている、ということではありません。
銀行カードローンに関する全銀協の取り組みについて(申し合わせ)
- 配慮に欠けた広告・宣伝の抑制
- 健全な消費者金融市場の形成に向けた審査態勢等の整備
全銀協が発表した上記の2つの項目について解説します。
配慮に欠けた広告・宣伝の抑制
資料の中で「広告・宣伝の中でお客さまの過剰な借入に対して注意喚起を行っていく等、 多重債務の発生抑制にも努める。」との記載があります。
具体的には、広告に「総量規制対象外」や「年収証明書不要」などの記載をしないこと、などです。
健全な消費者金融市場の形成に向けた審査態勢等の整備
また、「収入の確認」や「返済能力の確認」、「信用情報の変動の把握」などに努めるとの記載もあります。
具体的には「貸金業法の基準を意識した年収証明書の取得」や「貸金業法の総量規制の趣旨を踏まえた極度設定」、「定期的な年収証明書の再取得」などを行う、との発表がありました。
銀行カードローン審査の厳格化によって総量規制の適用や即日融資が不可になる?
全銀協が発表した申し合わせ内容の中には、「総量規制を参考にした極度額の設定」にすると明記されています。
銀行カードローンも「総量規制の範囲内」での借入上限
銀行法は「総量規制」がないため、過去には年収の何倍ものお金を借りられました。しかし全銀協の申し合わせにより、現在の銀行カードローンでは総量規制と同じように「利用者の年収3分の1以下の借入上限」が目安となる点に注意してください。
銀行カードローンでは「即日融資」も不可になる?
全銀協が発表した「銀行カードローンに関する全銀協の取組みについて」には、即日融資に関する項目はありませんでした。しかし、平成30年1月から銀行カードローンの即日融資が不可になっています。
銀行、個人即日融資を停止
国内の銀行各行はカードローンなど新規の個人向け融資で審査を厳しくする。来年1月から警察庁のデータベース(DB)への照会で審査に時間をかけ、即日の融資を停止する。
ニュースを確認すると、「警察庁のデータベースへの照会」を行うとの記載があります。これは、利用者が反社会勢力の関係者であるかどうかのチェックのことです。
警察庁のデータベースへの照会には最短でも1営業日以上かかるため、銀行カードローンは即日融資ができなくなりました。申し込み当日の即日融資を希望する方は銀行カードローンではなく、消費者金融カードローンを利用してください。
銀行カードローン厳格化によって利用しにくい方は「消費者金融カードローン」を!
本記事では銀行カードローン審査の厳格化について詳しく解説してきました。
銀行カードローン審査の厳格化によって自己破産者が減少した
- 過去のカードローンは上限金利29.2%で貸付が行われていた
- 貸金業法には年収の3分の1超のお金を借りられない「総量規制」が適用されている
- 銀行カードローンは「総量規制の対象外」による多重債務者、自己破産者が増大した
- 日弁連が内閣総理大臣などへ「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書」を提出
- 日弁連の意見書を受け、全銀協では「カードローン審査の厳格化」の申し合わせを発表
- 銀行カードローンは貸付額の自粛や、即日融資のサービス停止を行う
銀行カードローンはかつて「年収の3分の1超のお金の借入」や「即日融資」が可能でした。しかし、近年では銀行カードローン審査の見直し、厳格化され、総量規制を基準とした貸付上限(年収の3分の1以内)、また、即日融資が不可能になっています。
銀行カードローンは資金力のある「銀行からの融資」なので利用時に大きな安心がありますが、即日融資を希望している方は「消費者金融カードローン」への申込みを検討しましょう。現在でも消費者金融カードローンは即日融資が可能なので、急いでお金を借りたい方はスピーディーな融資が期待できるでしょう。