法人でFXをした場合の税金に関するメリットとデメリット
法人でFXをすると「節税効果が高い」という理由や「レバレッジ規制が回避できる」との理由から、(個人で)FX法人を設立する人がいます。通常、FXで掛かった経費は「必要経費」として認められますが、法人化するとさらに、経費として認められる部分が大きくなります。本記事では、法人でFXをした場合の「税に関するメリットとデメリット」を解説します。
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FX法人に課される法人税のしくみ
個人でFXをする場合、「年20万円以上の利益」で税金が課されますが(専業トレーダーの場合は年38万円以上)、法人に課される税の仕組みは異なります。まず法人には「法人税」が課されるのですが、法人税は国税である「法人事業税」と「法人住民税」の二つに分類できます。
法人税のしくみ(国税と地方税)
法人事業税(国税) | 会社の利益に課される「所得税」にあたる。赤字決算の場合に税金はかからない。税率は22%~30% |
---|---|
法人住民税(地方税) | 均等割が適用されるため、赤字決算でも最低限支払う金額が設けられている。 |
法人事業税(国税)は会社の所得に課される税ですが、所得の計算方法は【益金−損金】となり、赤字決算の場合に税金は発生しません。一方の法人住民税(地方税)とは、自治体のサービスを享受していることに対し、支払うべき税金です。このため、赤字決算の場合にも一部「支払うべき税」が発生します。法人地方税の計算方法は、次の通りです。
法人住民税(地方税)の計算方法
法人税割 + 均等税 = 法人住民税
上の「法人税割」は【法人税額 × 住民税率】で計算します。また均等税ですが、会社の規模(会社の所在地や法人の資金別等)によって金額(税率など)が異なります。
法人税割と均等割額を計算してみよう!
例えば、東京都の場合、会社が都内(23区内)にあり資本金が1千万円以下、かつ従業員50人以下の場合は「7万円」の均等割となり、住民税率は12.9%が適用されます。
東京都以外の場所も含め「均等割」と「法人税割」がどのように異なるのか。それぞれの仕組みを、事業規模別にまとめてみました。まずは均等割のしくみについて見てみましょう。
均等割のしくみ
資本金の額 | 従業員数 | 税率(年額) |
---|---|---|
1,000万円以下 | 50人以下 | 50,000円 |
1,000万円以下 | 50人以上 | 120,000円 |
1,000万円以上、1億円以下 | 50人以下 | 130,000円 |
1,000万円以上、1億円以下 | 50人以上 | 150,000円 |
1億円以上、10億円以下 | 50人以下 | 160,000円 |
1億円以上、10億円以下 | 50人以上 | 400,000円 |
10億円以上 | 50人以下 | 410,000円 |
10億円以上、50億円以下 | 50人以上 | 1,750,000円 |
50億円以上 | 50人以上 | 3,000,000円 |
次に、法人税割のしくみをまとめてみました。
法人税割のしくみ
資本金の額 | 平成31年9月30日以前に事業を開始 | 平成31年10月1日以降に事業を開始 |
---|---|---|
資本金の額が1億円以下の法人 | 11.1% | 7.4% |
資本や出資をもたない法人 | 11.1% | 7.4% |
法人ではない社団や財団 | 11.1% | 7.4% |
上記以外の法人 | 12.1% | 8.4% |
FX法人を設立する場合、どのような税金が発生するのか、上の表や計算式を使って計算してみてください。また個人で税金を納める場合と、どのくらい金額が変わってくるのか、以下の記事を参考に(税額・税率)比較してみましょう。
FX法人を作るメリットは3つ
FX法人を作るメリットは、レバレッジ規制の面、節税面、繰り越し控除のしくみなど、大きく分けて3つあります。
FX法人を作るメリット
レバレッジ規制の回避 | メジャーな通貨ペアであれば、レバレッジは100倍 |
---|---|
節税 | 会社を運営するための費用は、すべて経費になる |
繰り越し控除 | 赤字決算の場合、7年間繰り越し控除ができる |
それぞれのメリットについて、解説します。
FX法人を作るメリット① レバレッジ規制の回避
通常、個人でFX取引をした場合、レバレッジは「最大25倍」までと制限が設けられています(2018年8月末時点)。
もちろん法人にも「レバレッジ規制」が課されるのですが、法人の場合は認められるレバレッジの割合が大きく、メジャーな通貨ペアであれば「100倍」程度までレバレッジが掛けられます。つまり…個人の約4倍までレバレッジが掛けられるということは、より「大きなトレードが出来る」ということになります。
FX法人を作るメリット② 節税
個人でトレードする場合にも、FXで掛かった通信料や、パソコン・タブレット・スマホ関係の費用(※ただし、減価償却するなど、合理的な割合を算出する必要あり)など、一部を「経費」として計上できました。
法人の場合は、さらに経費として認められる部分が大きくなります。なぜなら、事業を運営するのに必要なものは、すべて「経費」として認められるからです。
個人の場合、自分のために使ったお金と「FXで使った費用」を切り分ける必要がありました。しかし法人の場合は、親族への給与、車や通信機器の減価償却費、経営者向けの生命保険、備品や消耗費全般、会社の家賃等々。法人化によって、経費計上できる部分は大きく広がります。
このほか、事業年度を早く終わらせることで、税理上有利に進めることができます。なぜなら、個人の決算期は「12月」と決まっていますが、法人の場合自由に決算期が設定できるからです。
FX法人を作るメリット③ 繰り越し控除
個人にも「3年間の繰り越し控除」が認められていましたが、法人の場合はさらに4年長い「7年間の繰り越し控除」が認められます。万が一、トレードで赤字になった場合でも、ここまで長く(7年間も!)繰り越し控除できれば安心ですね。
FX法人を作るデメリットは4つ
次に「FX法人化」のデメリットを見てみましょう。FX法人化のデメリットは、大きく分けて4つあります。
FX法人化のデメリット
コストがかかる | 登記費用、会社運営のコストが大きくなる |
---|---|
経理作業が複雑 | 経費の部分が増えれば、その分計算も複雑に |
儲けたお金が使いにくい | 会計上、自分で儲けたお金が使いにくい |
事業解体しにくい | 設立する以上に、廃業しにくい |
法人化のデメリットを順に解説しましょう。
FX法人を作るデメリット① 法人化はコストが掛かる
法人をつくるのにも「大きなコスト」が掛かります。先ず、法人化をするための登記費用、税理士や行政書士に支払う費等が発生します。また赤字決算の場合でも、法人地方税を支払う(※ 本記事前半を参照)必要があり、会社運営にも家賃や人件費など、多くの費用が掛かります。
FX法人を作るデメリット② 法人を設立すると経理作業が複雑になる
法人を設立しFXをすると、経費計上できる部分が多くなる分、経理作業が複雑になります。また個人の確定申告とは違い、法人税の計算方法は「やや複雑」です。このため、経理や税務に慣れていないと、正確な「税金の計算」ができず、決算期にあたふたしてしまうことでしょう。
FX法人を作るデメリット③ 儲けたお金が使いにくい
法人化してしまうと、受け取る利益は「役員報酬」という形になり、会社で儲けたお金を自由に使うことはできません。また、役員報酬を変えるにしても、議事録を作成したり、保険事務所への届け出が必要なので(お金を使う)自由度は小さくなります。
FX法人を作るデメリット④ 法人化すると事業解体しにくい
一旦、法人化してしまうと、会社をたたむのにもコストが掛かります。法人を設立したのと同じように、決算や登記、税金などのお金(+税理士、行政書士の依頼費用等)が掛かってきます。このほか「FX法人」をつくることは、租税回避行為と見なされてしまい、税務調査が頻繁に入るなどのデメリットも生じます。
法人を作る場合は、レバレッジや経費の面だけでなく、設立費用や運営費用、税金面の問題も大きくなることを覚えておいてください。
まとめ|FX法人を作る税制上の「メリットとデメリット」
最後に、FX法人を作る税制上の「メリットとデメリット」について、本記事の内容をまとめておきます。
FX用に法人を作る税制上のメリットとデメリット |
---|
☑ FX法人はレバレッジ規制が緩和される(レバレッジ100倍) |
☑ FX法人の運営に必要な部分は、すべて経費計上できる |
☑ 繰り越し控除が7年間に伸びる |
☑ 法人事業税と法人地方税の支払い、運営コストがかかる |
☑ 法人化で得た利益は、役員報酬で受け取る形になる(自由度が少ない) |
☑ 法人化してしまうと、事業をたたむのにもコストがかかる |
このようにFXの法人化は、必ずしも「節税」には繋がりません。もちろん、FXだけで何千万、何億、何十億と儲けが出るのであれば話は別ですが。余程、大きな利益が見込める場合や、コストを差し引いても「大きな利益」が残せる場合でなければ、安易に法人化しない方が良いでしょう。
なお、個人トレーダーのFXにかかる税率と税金計算の方法は、以下の記事にて解説しています。法人化した場合と「どのくらいの差」があるのか、チェックしておきましょう。
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